「東北地方太平洋沖地震」 その9 地殻変動

 「東北地方太平洋沖地震」は、地震の規模を示すマグニチュード値が9.0と、莫大な規模でした。マグニチュードが大きい地震ほど「震源域が広い」∩「プレートのすべり量が大きい(地殻変動がすさまじい)」ものです。今回は、地殻変動について解説します。

 地震の規模が甚大なだけあって、プレートのすべり量とそれによる地殻変動も史上最大級のものとなりました。

 国土地理院の分析によると、最大で「宮城県石巻市」の基準点が南東へ5.3mも動きました。東北の日本海側は約1m南東へ地殻変動しているため、差し引きで東日本一帯が約4m広がったことになります。震源域の真っただ中である「太平洋」沖は変動がさらに甚大で、正式に記録された水平変移量は24m~31mにおよびます。また、探査船「かいれい」による速報値では、陸側のプレートが最大で50~60m滑り、隆起量も7mあったそうです。隆起量に関しては津波の規模から10mあったのでは?という見方もあります(ちなみに、今まで想定されていたM8級の巨大地震でさえ、すべり量は5~10m、隆起量は1~3mです)。

 「東北地方太平洋沖地震」では、陸側のプレートが地震の規模以上に滑り過ぎ(「ダイナミックオーバーシュート」といいます)、変動量が理論値を超えて大きくなったとも言われています。それは、規模が一回り大きい「スマトラ島沖地震」(M9.1~9.3)よりも大きく、津波を巨大化させた一因だったそうです。

 この莫大な地殻変動は陸地にも影響を与えました。地震発生時に、「東北」の沿岸では「牡鹿半島」の1.2mを最大に、1m前後の地盤沈下が発生し、後に押し寄せる巨大津波の被害を一層拡大させました。地盤沈下の著しい場所は今でも大潮のときには浸水し、地形図を書き換えなければいけない惨状です(被災地に配慮して、地形図の書き換えは当分行わないそうです)。

 今回の地震の型であるプレート境界型地震は、震源域はほとんどが海底になります。現にこの地震はすべての震源域が海底でした。本来この様な地震では、地殻変動の影響は陸地までには影響が及ばないはずです。現に「東北」で起きた過去の大地震・巨大地震ではここまでの地盤への影響の記録は残っていません。今回の地震は、地殻変動がの範囲と規模が大きすぎたが故にそのしわ寄せが陸地にまでおよんだのです。



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http://www.gsi.go.jp/cais/topic110313-index.htmlより1
 プレート境界型地震で起きる地殻変動を断面で示したものです。海洋プレートの沈み込みに反発して跳ね上がった大陸プレートの先端部(すなわちプレート境界、海溝付近)は、跳ね上がりの影響で隆起し、その反動でプレート境界(海溝)から離れた場所は沈降します。それが今回は「東北」沿岸になったのです。

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http://www.gsi.go.jp/cais/topic110313-index.htmlより
 2つの図のうち上側の図は平面上の地殻変動、下側の図は上下方向の地殻変動を示します。震源域、さらにいえばプレート境界(海溝)に近い場所ほどその変動が大きくなっています。


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http://www.gsi.go.jp/cais/topic110314.2-index.htmlより
 プレート境界(海溝)に近い海底部では、地殻変動の量がさらに大きくなっています。20mを超える変動の範囲が少なくとも100km四方におよんでいます。

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http://www.gsi.go.jp/cais/topic110314.2-index.htmlより
 隆起と沈下の規模と範囲を示した図です。沈下範囲の一部が「東北」の沿岸にかぶり、陸地にも影響が出ました。

複雑怪奇な地震
 一般に海溝型地震といえば、「引きずり込まれたプレートがびょーん!と跳ね上がる」、「跳ね上がる場所は地震1つにつき1か所」、というイメージがあります。
 しかし、この地震は、1つの断層が破壊された単純なものでなく、少なくとも3つの断層が今まで想定されていた6つの震源域をまたいで動きました。はじめは「岩手県」~「宮城県」沖合、次にそのさらに沖合、最後に「茨城県」沖合の順に揺れの範囲が南下してきました。これらの3つの揺れがわずかな時間差でほぼ連続的に発生したため、全体で6分間も揺れが続きました。
 また、断面からみてもプレートの破壊(跳ね上がり)は、

① 発生から3秒間は浅い(約25km)海溝側で緩やかな初期破壊。
② 40秒かけて深部(約40kmまで)に破壊が伝播し、短周期の地震波により陸上の激しい揺れをもたらす。
③ 続いて発生60-75秒後にかけて浅い海溝付近でダイナミックオーバーシュート(dynamic overshoot、動的過剰滑り)により長周期の地震波と大規模な津波を発生。
④ その後、再び深部へ破壊が伝播し、発生90秒後にかけて短周期の地震波により再度陸上の激しい揺れをもたらす。大きな破壊は100秒後までに止む。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E5%8C%97%E5%9C%B0%E6%96%B9%E5%A4%AA%E5%B9%B3%E6%B4%8B%E6%B2%96%E5%9C%B0%E9%9C%87#.E5.9C.B0.E9.9C.87.E3.81.AE.E7.89.B9.E5.BE.B4.E3.81.A8.E7.99.BA.E7.94.9F.E3.83.A1.E3.82.AB.E3.83.8B.E3.82.BA.E3.83.A0より

 深部と浅部を往復して起きていました。専門家によると、このような複雑な起こり方は極めてまれで、気象庁では初めての観測だったそうです。つまり、「東北地方太平洋沖地震」の仕組みはまだ分からないことが多いようです、まあ、過去数百年~千数百年の範囲で見ればこのような連動型巨大・超巨大地震は起きていたでしょうが、機械的観測がおこなわれた近代日本では初めての例となり、地震がさらに複雑怪奇なものであるのかが解明されそうです。


参照↓
「東北地方太平洋沖地震」 その1 マグニチュードについて
「東北地方太平洋沖地震」 その2 揺れについて
「東北地方太平洋沖地震」 その3 「前震」と「余震」と別の地震の誘発について
「東北地方太平洋沖地震」 その4 他の地震の誘発について
「東北地方太平洋沖地震」 その5 「貞観地震」との関連ついて
「東北地方太平洋沖地震」 その6 過去に起きた連動型超巨大地震
「東北地方太平洋沖地震」 その7 M9級の超巨大地震が想定され“にくかった”理由
「東北地方太平洋沖地震」 その8 超巨大地震と巨大津波についての、最近の研究
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