「東北地方太平洋沖地震」 その7 M9級の超巨大地震が想定され“にくかった”理由

 「東北地方太平洋沖地震」は、M9.0の超巨大な地震になりましたが、この規模の地震は「日本」ではあまり想定されず、一般人にはほとんど実感がわいてきませんでした。「日本」国内で起こり得る巨大地震と言えばM8.0級で最大でも8.5と、「東北地方太平洋沖地震」の1/5~1/30のものとされていました。何故「日本」ではM9級の超巨大地震があまり想定されていなかったのか?その理由を挙げます。


「日本国内」においては正式記録が非常に少ない
 地震は巨大なもの(Mが大きいもの)ほど起こる回数が少ないものです。したがって、M9級の超巨大地震は、全世界をみても過去100年間で5回ほどしか確認されていません。以下に記すのが、過去に起きたM9級の地震です。

カスケード地震(M8.7~9.2、1700年)
アリカ地震(M9.0~9.1、1868年)
カムチャツカ地震(Mw9.0、1952年)
チリ地震(Mw9.5、1960年)
アラスカ地震(Mw9.2、1964年)
スマトラ島沖地震(Mw9.1~9.3、2004年)
東北地方太平洋沖地震(Mw9.0、2011年)


 ここで注目すべきは、「日本」では今までM9.0級の超巨大地震が正式に観測されたことがなかった点です。以下に、「日本」で過去に起きた、もしくは想定されている巨大地震を挙げます。

三陸沖地震(多くの場合M8以上、869年の貞観地震はM8.3~8.6、1896年の地震はMw8.5、1933年の地震はMw8.4・Mj8.1、1968年の三陸沖北部地震はMw8.3・Mj7.9)
南海地震(多くの場合M8以上、1361年の地震はM8.4、1946年の昭和南海地震はMw8.1・Mj8.0)
関東地震(M8前後を想定、1703年の元禄大地震はM8.1、1923年の地震〈関東大震災〉はMw7.9)
東海・南海・東南海連動型地震(1707年の宝永地震はM8.4~8.7)
東海地震(M8前後を想定、1854年の安政東海地震はM8.4)
濃尾地震(Mw8.0、1891年)
喜界島地震(Mj8.0、1911年)
東南海地震(多くの場合M8以上、1944年の昭和東南海地震はMw8.1・Mj7.9)
十勝沖地震(M8前後、1952年の地震はMj8.2、2003年の地震はMw8.3・Mj8.0)

※Mwは「モーメントマグニチュード」、Mjは「気象庁マグニチュード」です

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%A8%E5%A4%A7%E5%9C%B0%E9%9C%87より


 これによると、M8.5級の巨大地震は、数十年~100年に一度起きるまれな地震で、それを超えるものと言えば平安時代に起きたM8.3~8.6の「貞観地震」(貞観11年5月26日(869年7月13日)発生)やM8.4~8.7の「宝永地震」(宝永4年10月4日(1707年10月28日)発生)など、数えるほどのようです。(ただし、当時の地震を今の技術で生で解析できていたら、9.0になることもあるかも(「貞観地震」や「宝永地震」は震源域がとてつもなく広いので))。要は、数百年に一度・今まで確認されなかった超巨大地震よりも、数十年~百数十年周期で起こるM8級の巨大地震の方が今を生きる我らには現実的で注目しやすかったともいえます。

M9級の超巨大地震は起こりにくい環境と考えられていた
 上で述べた歴史的傾向もそうですが、「日本」とその近海で超巨大地震が起こりにくい理由も科学的に考えられてきました。それには、海洋プレートの、大陸プレートへの沈み込みの角度が関係しています。海洋プレートの沈み込みの傾斜(角度)が急なものが「マリアナ型」、浅いものが「チリ型」と言われます(←モデルになっている「マリアナ海溝」は、海洋プレートの沈み込みの傾斜が急だから水深が深い)。


「マリアナ型」(←「日本」近海)
海洋プレートの沈み込み角度が大きい

海洋プレートが比較的なめらかに大陸プレートの下に沈み込む

地震の源となるひずみが溜まりにくい

比較的小さめ(とはいってもM7~8級だが)の地震が小出しで起きやすい



「チリ型」(←「チリ」近海)
海洋プレートの沈み込み角度が小さい

「マリアナ型」と比べて、海洋プレートがに大陸プレートにひっかかりながら沈み込む

地震の源となるひずみがたくさん溜まりやすい

超巨大地震(M9級)が起きやすい


 海洋プレートは大陸プレートと衝突し、擦れつつ下に沈み込みます。沈み込みの傾斜が急だとその摩擦が小さくなめらかに沈み込みます。そのためひずみが溜まりにくく地震のエネルギーが溜まりにくいのです。傾斜が浅いとその逆になります。「日本」近海の海洋プレートは多少急傾斜で沈み込むらしいです。そのため、より傾斜が浅い「チリ」近海のように超巨大地震が起こりにくい環境ではないか?と言われていました。
 しかし、よく考えてみれば、「日本列島」は過去も今も「付加体」とよばれるプレート同士の衝突で剥ぎ取られる地質体が、プレート境界で造られています。「付加体」は、海洋プレートの沈み込みの傾斜がある程度浅い=摩擦がある程度ある場所で造られるらしいです。つまり、「日本列島」でも「チリ型」の性格をはらんだプレート境界がうじゃうじゃあると言えるネタはあるのです。

 以下の新聞記事(以下の、黒色・赤色文字)には、地震のエネルギー放出とプレートのすべりの関係について記述されています。

数百年分のエネルギー放出 国土地理院がGPSデータ解析
産経新聞 6月16日(木)2時4分配信

 東日本大震災の巨大地震では、過去数百年にわたってプレート(岩板)境界に蓄積されたひずみエネルギーが放出されたことを、国土地理院の研究チームがGPS(衛星利用測位システム)による地殻変動データの解析で示し、16日付の英科学誌「ネイチャー」に発表した。

 研究チームは、マグニチュード(M)9.0の本震とその後の余震による地面の変動を、GPSの観測データをもとに解析。その結果、本震でプレート境界が大きくすべった範囲(震源域)は、日本海溝寄りの領域を中心に南北400キロに及び、すべり量は最大で27メートルだった。

 東北地方の太平洋沖では、太平洋プレートが北米プレートの下に年間7.3~7.8センチの割合で沈み込んでいる。この領域では数十年から100年程度の周期でM7~8クラスの地震が発生するが、これらを足し合わせても沈み込みで蓄積されるエネルギーの10~20%しか放出されないことが知られていた。
 研究チームの今給黎(いまきいれ)哲郎・地理地殻活動総括研究官は「残りの80~90%は、プレート境界が常時すべることで解放されているという考えが、大震災前は主流だった。実際には日本海溝寄りにエネルギーをため込む領域が存在し、今回の大震災では数百年分が一気に解放された」と説明。また、海底のGPS観測網を充実させれば、他の海溝系でも巨大地震の発生可能性などの評価に役立つとしている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110616-00000503-san-sociより

 今までの情報と絡めて要約すると、地震エネルギーの大半は「マリアナ型」の特性で滑らかに穏やかに消費されていると考えられていたけど、数百年~1000年周期で密かに蓄積したエネルギーが一気に開放されることがあるらしいです。それが、「東北地方太平洋沖地震」となって「貞観地震」や室町時代に起きたといわれる超巨大地震以来の規模になったのだそうです。

参照↓
「東北地方太平洋沖地震」 その1 マグニチュードについて
「東北地方太平洋沖地震」 その2 揺れについて
「東北地方太平洋沖地震」 その3 「前震」と「余震」と別の地震の誘発について
「東北地方太平洋沖地震」 その4 他の地震の誘発について
「東北地方太平洋沖地震」 その5 「貞観地震」との関連ついて
「東北地方太平洋沖地震」 その6 過去に起きた連動型超巨大地震
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