ツンデレを言語学的に語る論文

ツンデレについて、言語学的に論じている論文があったので紹介します。題名は

ツンデレ属性と言語表現の関係―ツンデレ表現ケーススタディ― *1
冨樫純一(大東文化大学)jtogashi@ic.daito.ac.jp
http://www.daito.ac.jp/~jtogashi/articles/togashi2009a.pdf)です。

 なかなか面白かったため、以下に序章をはじめとする内容の一部(ていうか、半分近く)を載せておきます(黒色文字、一部桃色文字で表現、すべて本稿より引用)。全部読みたい方は、上述のURLからどうぞ。よくもまあ、こんなところまで考えますなあと、純粋に思いました。

0. 問題の所在
 「ツンデレ」と呼ばれる概念は、2002年後半にインターネット上のスラングとして登場し、おおむね2004~2005年を境として、一般層にも普及しつつある。昨今のサブカルチャー作品において、ツンデレキャラクターは必要不可欠な存在となっており、作品そのものに言及する場合においても、ツンデレの存在が意識されないことはないといえる。
 (オタク系の間で)ツンデレキャラクターは、次のような特徴的な言葉づかいをするものという共通認識がある。
(1) し、心配なんてしてないんだからね! (釘宮(2007) 読み札「し」)
(2) そんなに言うなら…花火大会い、い、一緒に行ってあげてもいいわよ? か、勘違いしないでよ! ひ、暇だっただけよ!? (釘宮(2008b) 読み札「そ」)


 表現のつっかえ、言いさしの「から」等が多く用いられている。博士語やお嬢様言葉といった、典型的な役割語ほどではないにしろ、こういった言葉づかいをさせることで、特定の偏った人物像が想起できる。これらの「ツンデレ表現」は、ツンデレキャラクターを特徴付けるために用いられているといえる。逆に、ツンデレ表現を目にすれば自ずとツンデレキャラクターが想起されるのである。本発表は、特定の言語表現とツンデレ属性の親和性の高さに注目し、その関係を検討していくことを目的とする。

 つっかえがツンデレ属性を想起させる表現であることは疑いようがない。ツンデレのステータスとして確立されていると見ていいだろう。事実、釘宮(2007,2008a,2008b)*5におけるツンデレキャラクターはつっかえることが非常に多い。そこで、釘宮(2007,2008a,2008b)における、つっかえの使用数を調査した。
(18) つっかえ(とぎれ型)
語頭戻り方式
釘宮(2007) 10
釘宮(2008a) 150
釘宮(2008b) 37
 約四割の発話につっかえが現れており、その全てが「とぎれ型・語頭戻り方式」であった。つっかえとツンデレ属性の親和性の高さが窺える。

 隠そうとする感情が垣間見えたことを相手に指摘されると、照れの感情ひいては相手に弱みを握られることにつながる(客観的には、弱みではなく、両想いというプラスの結末に向かうのであるが、本人はそう思っていない。先に素直になったほうが負けなのである)。そこで、「~てあげる」「~てもいい」のような優位性を確保する表現を用いて、指摘を回避するように仕向けるのである。「~てあげる」「~てもいい」によって、話し手の心理的優位性が確保され、それが特別な感情へのこれ以上の踏み込みを拒否する態度を表出させる。優位性の確保を示す類似のツンデレ表現には、「たまたま」「偶然」「特別に」「勘違いしないで」等の副詞類や、人称表現「あんた」等が挙げられるだろう。
 なお、「~てあげる」「~てもいい」はツンデレ表現《表》に限られることも付け加えておく。素直でない表現ならば、わざわざ優位性を確保する必要がないからである。優位性は素直な表現にかぶせられるものなのである。

 西田(2008)も指摘するとおり、ツンデレは「素直になれない」という性格を言い表した概念である。こういった性格の把握は主観的にしか行われず、人によって性格の解釈が異なってくる。あるキャラクターがツンデレであるかどうかの判断が分かれるのはまさにこの理由による。素直でないと判断する基準に統一性が無いのである。
 さらに、1節で規定した「特別な感情」も非常に曖昧である。一般的には恋愛感情を指すのであるが、これも捉え方がさまざまであり、友情や親子愛を含む解釈も可能である。そうなると、海原雄山(『美味しんぼ』(雁屋哲原作・花咲アキラ作画, 小学館))や碇ゲンドウ(『新世紀エヴァンゲリオン』(貞本義行, 講談社))のようなキャラクターまでツンデレとして認定されてしまう結果となる。
 つまり、性格感情という内面のものであることが、キャラクターの役割を決める上での障壁となっているのではないか。「主観的」にしか決定しえない点が典型的役割語とは認めにくい理由の一つである。
 ツンデレは「素直になれない」という側面を持っているが、だからといって「素直になれない」キャラクターが全てツンデレとは言えないはずである。しかしながら、つっかえや「のだから」は使用範囲も広く、比較的ツンデレ属性を想起させやすい表現である。性格属性の描写の内でも、典型的役割語に近いものとそうでないものがあるといえるのではないだろうか。

5. 今後の課題
(a) 曖昧な概念をどこまで精緻化できるか
→特にツンデレ《表》をツンデレと認めるかどうかについては要検討。
(b) 表現の分析
→ツンデレ表現の種類を豊富にしてどこまで意味があるか。また、ツンデレ属性を
想起する形式と、ツンデレキャラクターの持つ別属性を想起する形式とを厳密に
分けるべき。
(c) 資料の収集と整理
→まとまった形で利用できるのは今のところ釘宮(2007,2008a,2008b)のみ。


 この要旨では、釘宮理恵の「ツンデレかるた・ほか」、ラブひなの「成瀬川なる」、ローゼンメイデンの「翠星石」などを例に、ツンデレキャラの台詞を言語学的に色々と語っています。参考として、おいしんぼの「海原雄山」や新世紀エヴァンゲリオンの「碇ゲンドウ」までもが…。とくに統計の観点では、声優の釘宮理恵が声を担当している「ツンデレかるた」シリーズから大いなる引用が行われています。ご丁寧に、ツンデレの源と思われる資料や参考文献までもが色々と。こういうのを専門的に研究している姿を見てみたい。
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